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【12/7 共同養育Lab.開催報告】アタッチメントと共同養育〜子どもの心の安全基地を育む

2025年12月9日 最終更新日時 : 2026年5月13日 kanri

第9回となる今回は、NPO法人日本家族関係・人間関係サポート協会の渡辺裕子氏をお迎えし、「アタッチメントと共同養育」をテーマに学ぶ機会となりました。参加者6名(男性2名、女性4名)とともに、家族看護の専門家として30年以上の経験を持つ渡辺氏から、アタッチメント理論の基礎から別居・離婚後の共同養育への実践的な示唆まで、幅広く学びました。

参加者からは、「アタッチメントが何歳からでも育つと知って希望が持てた」「自分の子育てを振り返る機会になった」「面会交流での具体的な関わり方のヒントが得られた」などの声が聞かれました。

内容

1)アタッチメントとは何か

ボウルビィ(1950年代)による定義を基に、「人は生まれながらに誰かにくっつきたいという本能を持っている」ことが紹介されました。不安や恐れを抱いた乳児が養育者を呼び、抱き上げられて不安が収まる体験を繰り返すことで、特定の養育者との間にアタッチメント関係を形成します。

渡辺氏は、ポリヴェーガル理論との関連にも言及。生後、養育者との安定したアタッチメント体験を通じて「緑の神経(腹側迷走神経)」が育ち、複数の「緑」の養育者から「緑」をもらうことで、子どもの社会的関与システムが発達すると説明されました。

2)アタッチメントが人にもたらすもの

生後1年での形成:

  • 不安や恐れを取り除き、安心した状態をもたらす
  • 「困ったときには助けてもらえる」「養育者は頼れる存在」という原初的信頼感

長期的影響:

  • 情動調整システム: 自分の気持ちにうまく対処できる力
  • 内的作業モデル: 自分はどのような存在か、世界はどのようなものか、自分は価値ある存在かという核心的信念

これらは一生を通じた他者との人間関係に影響を与え、特に養育場面で色濃く表れます。アタッチメントは自己価値や世界への信頼に深く関わっています。

3)アタッチメントの個人差(4つのタイプ)

  • B型(安定型): アタッチメント対象への信頼があり、危機時に不安を表出し、慰めを受け入れて速やかに立ち直る
  • A型(回避型): 情動を抑える方向で対処。過剰に我慢し一人で乗り越えようとする
  • C型(アンビバレント型): 感情を誇張し過剰にアピール。慰めがあっても立ち直るのに時間がかかる
  • D型(無秩序型): フリーズ、混乱などの奇妙な行動。虐待やネグレクトを受けている可能性

4)共同養育のメリット

夫婦間に葛藤がない場合:

  • 子どものより安定したアタッチメント獲得
  • 家庭内での情緒的安定
  • 対人関係のモデルと良好な社会性の獲得
  • 親や子ども自身に困難な特性があっても、子どもへの悪影響を軽減させる可能性

5)別居・離婚後の共同養育とアタッチメント

アメリカの研究では、離婚後の父親と子どもとの安定した交流が、父親と子どもの関係性構築、メンタルヘルス、離婚後の生活への心理的適応に好ましいことが示されています。一方で、交流が阻害されている場合、父親の立ち直りの困難さや、子どもの学業成績低下、問題行動などのリスクが指摘されました。

忠誠葛藤の理解: 離婚後の子どもが直面する最大の心理的課題として「忠誠葛藤」が説明されました。「どちらの親も裏切りたくない」という葛藤により、子どもは「どちらをとっても『YES』がない」引き裂かれるような体験をします。

6)アタッチメント関係を育む別居・離婚後の交流

応答性(敏感性・共感性)が鍵:

  • 温かく共感的な態度で接する: 親自身が「緑」(安定した状態)であることが最重要
  • 子どもの発達レベルを念頭に置く: 小学2年生にサッカーの反省を求める等は不適切
  • 子どもの気質や特性を理解する: 日常性・習慣を大切にする。お気に入りのぬいぐるみ、朝の温かい牛乳など
  • 子どもの感情をひとまず受け入れる: ジャッジしない
  • 一貫した行動: コロコロ変わる言動は子どもを混乱させる
  • 実現可能な約束をする: 喜ばせたい気持ちから無理な約束をしない
  • 親自身が交流を楽しむ
  • 元夫婦間の葛藤に子どもを巻き込まない

会えない期間: 「焦らず、慌てず、諦めず。決して諦めないでください。でもしつこくしてはいけません」

7)何歳からでもアタッチメントは発達する

不安定なアタッチメントで育った人も、親密な関係(パートナー、親友)を通じて安定型へ変化可能です。50代、60代でも、高齢者施設での関わりでも変化は起こります。

朗報: 親との間でアタッチメントが得られなかったとしても、パートナーや別の安心できる人たちの間で、いくつになってもそれは育まれます。この希望のメッセージが参加者の心に響きました。

参加者の声

  • 「アタッチメントが何歳からでも育つと知って希望が持てました。自分も変われるかもしれないと思えた
  • 「子どもの『忠誠葛藤』という概念を知って、子どもの気持ちがよくわかりました。元配偶者への対応を見直したい」
  • 「面会交流で何をしていいかわからなかったが、『子どもの発達レベルに合わせる』『日常性を大切にする』というヒントが得られた」
  • 「親自身が『緑』であることの重要性が印象的でした。自分の状態を整えることから始めたい」
  • 「ゲームの時間などのルールメイキングについて、他の参加者の意見が聞けて参考になった」

共同養育へのアタッチメントの工夫

ルールメイキングとバウンダリー

睡眠時間、ゲーム時間などについて、両親間で基本的なルールの合意が必要である一方、「一緒に過ごす時間まで口出しされたくない」というバウンダリーの尊重も重要という議論がありました。子どもの年齢・発達段階に応じたルールの見直しも必要です。

面会交流の工夫

父子二人だけだと「何をしていいかわからない」という課題に対し、複数家族での活動、他の大人・子どもがいる環境での交流、一緒に料理を作る・生活する体験の共有などが提案されました。

支援体制の必要性

合意したルールが守られるための継続的サポート、定期的な第三者の介入、裁判・調停後のフォローアップ体制の充実が課題として挙げられました。

運営の感想

共同養育Lab.も9回目を迎えました。今回の渡辺裕子先生の講演は、私たちがこれから取り組もうとしているパートナー対話セッションや共同養育のためのADRにとって、非常に示唆に富む内容でした。

「愛着形成には、落ち着いている大人がいることが必要」という言葉が印象に残りました。夫婦関係がうまくいかなくなっている時は、家の中でお互いが安心に感じられないことも起こり得ます。そういう時には、子どもはその影響を多分に受けます。

だからこそ、親自身が安心できる人と関わることで自分の安心を取り戻すことが大切であり、自分自身を安心させるためのいろいろな手段を持っていることも重要だと感じました。

私自身、双子として育った経験から、欲しい時に欲しいものが必ずしももらえなかった可能性があり、つい最近まで家族といても安心していられない感覚がありました。しかし、「親との間でそれが得られなかったとしても、パートナーや別の安心できる人たちの間で、いくつになってもアタッチメントは育まれる」という朗報は、多くの人に希望を与えるものだと思います。

両親の間にたって引き裂かれるような葛藤を抱える子どもが少しでも減るように、今後のガイドライン作りに今回の学びを活かしていきたいと思います。

渡辺裕子先生、貴重な講演をありがとうございました。

まとめ

本講座を通じて、アタッチメント理論が共同養育を考える上で非常に重要な枠組みを提供することが明らかになりました。「子どもは複数の『緑』の養育者との関係で育つ」「親自身が『緑』であることが何より重要」「忠誠葛藤への理解と配慮が不可欠」という核心的メッセージが共有されました。

渡辺氏の「親であることの限界」という指摘も印象的でした。個人の努力だけでは限界があり、「子どもが幸せに生き抜いていけるよう、社会にどんな支えがあればいいのか」を考える必要性が強調されました。

共同養育Lab.は、今後も毎月第1土曜日または日曜日の午後に開催予定です。共同養育に関心のある方は、ぜひお気軽にご参加ください。

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