父母が婚姻状態に
関わらず
対等な関係で
子育てをする。

それが共同養育

共同養育とは

「子育ては誰がするの?」と聞かれたとき、どんな人を思い浮かべますか?母親、父親、おじいちゃんおばあちゃん、ファミサポなど、人それぞれかもしれません。では「未婚の子の子育ては?」「離婚後の子育ては?」となると、違う答えが浮かぶかもしれません。

共同養育とは、結婚しているかどうかに関係なく、父親も母親も一緒に子育てをすること。特に、別居や離婚後も二人で子育てを続けていくことを指します。日本では「ひとり親」という言葉が示すように、離婚したら片方の親(特に母親)が一人で子育てをして、もう片方(特に父親)はお金を払うだけ、というイメージがあります。共同養育は、そんな考え方を変えていこうというものです。

海外では、共同養育がごく普通のこととして広まっています。例えばアメリカでは、子どもが週末ごとにパパの家とママの家を行ったり来たりするのが当たり前。それぞれの親が子どもとの時間を楽しみ、学校の面談にも両親で参加したり、別々に行ったりしています。子どもが元パートナーのところに行っているときは仕事に打ち込んだり、新しいパートナーとの生活も楽しんでいると聞きます。そんな様子が各国のCMや映画で描かれてもいます。

共同養育の形はいろいろ。元夫婦が直接話し合いながら進める方法(協調的養育)もあれば、決まりごとを細かく決めて、間に入ってくれる人を通じて進める方法(並行的養育)もあります。つまり、元夫婦が仲良くする必要はまったくないのです。参考までに、「ビジネス思考で離婚後の子育ては必ずうまくいく!」(株式会社イオン・ネット (2024/10/22))には、特に後者の方法が詳しく書かれています。

結婚しているかどうかに関係なく、父親も母親も対等な関係を維持しながら、子どもを支えていく。それが私たちの考える共同養育の姿です。

日本と海外の結婚・子育ての違い

なぜ、日本と海外でこのような子育ての違いが生まれたのでしょうか。その答えは法制度にあります。

子育ての役割を定めているのが、民法の家族法、特に親権法と呼ばれる部分です。1898年に制定された明治民法では単独親権制度が規定され、父親が子に関する意思決定の全権限を持っていました。この単独親権制度は1947年の戦後民法改正で形を変えたものの、その基本的な仕組みは130年以上続いてきました。そして、2024年5月にようやく婚姻状態に関わらず父母ともが子育てをする共同親権を認める改正民法が可決され、2026年5月までに施行されます。

戦後民法は、実は当時としては画期的な男女平等の理念を持つものでした。婚姻中の父母双方の親権を認め、婚姻を両性の合意のみで成立させるなど、世界をリードする内容を備えていたのです。

一方、海外では、フランスは1965年まで、ドイツは1977年まで、女性の就労に配偶者の許可を必要とするなど、父権的な法制度が続いていました。しかし1979年、米国で単独親権の問題を扱った映画「クレイマー、クレイマー」を契機に共同親権制度への転換が始まり、1990年の子どもの権利条約の発効前後から、各国は子育ての男女平等を実現すべく、単独親権から共同親権制度へと移行していきました。

つまり、日本は先進的だった戦後民法の親権法を80年近くもの間維持し続けたがゆえに、世界から取り残されてしまったのです。結果として、先進国では類を見ないシングルマザーの貧困問題に加え、子どもの連れ去りや親子断絶の問題に対して、国際社会から強い批判を受ける*1に至っています。

そんな世界から20〜30年以上遅れて2026年に漸く父母ともが子育てをできる制度に転換するのです。そして、今回の日本の共同親権制度の特徴は、離婚後だけでなく未婚の場合でも認められることです。これは「結婚」と「子育て」の関係が切り離されることを意味します。「授かり婚」という言葉に象徴されるように、私たちは子育てと結婚を不可分のものとしてイメージしてきましたが、今回の法改正はその考え方を大きく変えることになります。

そもそも子どもは婚姻状態に関係なく誕生するものであり、実の親が子育ての権利義務を持つのは自然なことで、婚姻関係と親権を結びつけていた従来の制度こそが不自然だったとも言えます。共同親権制度が浸透したフランスでは、法律婚、事実婚制度(PACS)、非婚カップルでの子育て支援の違いは無く、それぞれ約3分の1ずつを占めているとのことです。

日本でも共同親権の法改正を機に、柔軟性に欠ける婚姻制度に縛られない、事実婚のカップルが増えていく可能性があるのではないでしょうか。

*1 各国からの非難の例
国際離婚後の子どもをめぐる問題、EU各国大使が日本政府に働きかけ」(2018/4/17)
欧州議会、日本におけるEU市民の親からの子の連れ去りに警鐘を鳴らす」(2020/7/8)
The bizarre law that makes kidnapping children legal in Japan | 60 Minutes Australia」(2023/3/19)

共同養育定着化に向けた課題

日本で共同養育を定着させる上で、いくつもの課題が存在しています。その最大の要因は、ほぼすべての社会システムが単独親権制度を前提としていることです。この制度は「世帯」「戸籍」「姓」という家族管理単位と密接に結びついており、例えば子育て給付や就学通知は世帯主宛てに送られ、離婚後の異姓の親子関係を簡易に証明する仕組みも整っていません。

最も深刻な問題は、父母間の意見調整機能が社会に実装されていないことです。子育ては日常的な判断から、病気の治療方針や教育方針まで、様々な意思決定の連続です。憲法24条で定められているように、家庭内の父母関係は本質的に対等であるため、意見が分かれた際に決定が困難になります。大家族であれば周囲の助言で解決できた問題も、核家族化が進んだ現代では深刻な対立に発展することがあります。

この問題は戦後民法で婚姻中の共同親権が制定された頃から認識されていましたが、80年近く放置されてきました*2。現在も子ども家庭支援センター、家庭相談窓口、学校のいずれも、父母間の対立への支援機能を持ちません。家庭裁判所でさえ、意見調整を行わず、どちらかの親に全権限を委ねるだけです。

一方、海外では父母間の意見対立に対する公的支援が整備されています。オーストラリアの家族関係支援センタードイツの少年局、フランスの家族仲裁などがその例です。さらに民間の調停人(メディエーター)制度も存在しており、イギリスでは引っ越し時の各種手続書類にメディエーターの案内が同封されると聞いています。

このように、日本の共同養育の定着には、父母間の意見調整機能を中心とした、家族支援システムの抜本的な改革が必要とされています。

*2 「婚姻中共同親権は形式に過ぎず「幻」だった」(松村直人 2022/4/15 )

一緒に創り上げよう共同養育の姿

共同養育とは、子どもが父母から継続的に愛情と支援を受けるよう、主体的に関係性を決めるという、本来当たり前のことを実現するだけのものです。

しかし現在の日本は、長きにわたる単独親権制度のため、国が家族のあり方を決めてきたがゆえに、父母による共同養育を支える社会的基盤がほとんど存在していません。例えば東京都中央区では、就学前児童を持つ親のフルタイムの共働き率が63.5%(2023年)*3であるにもかかわらず、離婚後にひとり親支援制度はあっても、離婚後の共同養育を行う父母への支援制度はありません。別居に伴う双方の生活基盤の立ち上げ支援も、中受離婚という書籍も出るほど父母のすれ違いを産む中学受験(中央区・港区は中学受験をする割合が50%を超える)の父母間の教育方針の調整支援も、交代監護のための学校・保育園での子どもの引き渡しルールも、いずれも整備されていません。

このような環境ではあるものの、本来、私人間の関係である家族のあり方が国や行政システムに制限される必要などないはずです。

国や行政システムなどに決められず、父母自らが主体的に子育てのあり方を決める。父母による多様な子育てのあり方が当たり前として認められる社会の実現に向けて、皆さまと共に東京湾岸エリアにふさわしい共同養育の形を創り上げていきたいと考えています。

*3 「(仮称)中央区こども計画(第三期中央区子ども・子育て支援事業計画)<骨子案> 」P.18(2024)