【6/8 共同養育Lab.開催報告】日本における共同養育実践事例から学ぶ
第3回となる今回は、実際に共同養育を実践してきた日本在住のまきさんをお招きし、離婚後の子育てのあり方や、交代監護から現在に至るまでのプロセスを伺いました。参加者13名(男性7名、女性6名)の方と共に、父母ふたりで育てる意味や方法について深く考える時間となりました。
現在、高校1年生の娘さんと同居中。親権者は元夫にあり、まきさんにはありません。
娘さんが3歳のとき、「お互いで育てる」という口約束で協議離婚し、小学4年生の頃から共同養育を開始。高校進学などの重要な決定は娘さん自身の意思でおこない、生活環境を選択。現在のまきさんとの同居に至ります。
共同養育への道のり
1. 協議離婚(娘3歳)
まきさんと元夫は長野県在住。親権は元夫に。「離婚後も近所に住みながらお互いで育てよう」と口約束し、近所に住みながらの子育てを継続。娘は週2〜3回、行き来する形での共同の子育てが続いた。自分ひとりで頑張るつもりはなく、実家・義実家も近く、環境としても整っていた。
2. 別居親スタート(離婚4か月後)
まきさんと元夫との間のちょっとしたトラブルから「親権がないのに娘と住むのは誘拐だ」と通報され、娘といた自宅に警察が来訪。その後、娘と会えない別居親となった。この出来事は非常にショックで、つらい経験だった。
3.調停(面会交流・親権変更)
それまで娘と暮らしていた経緯をもとに、月4回(うち1回宿泊)の面会交流が認められる。一方、親権の変更は難しいと判断し、申し立てを取り下げて合意。
4. 再調停と損害賠償請求(2年間)
夏休みに面会を拒否され1か月会えなかったことから、面会交流不履行として再調停を申し立て。
「近くに住んでいるのに会えない」「娘は会いたがっている」という理由で、娘の安心できる環境づくりを目指した。
学校の近くに住み、下校時の娘と顔を合わせる日々を過ごす中、「パパが親権を持って決めるけれど、あなたの気持ちも大事。ママと話したいときは話していい」と伝え続けた。
調査官調査の家庭訪問では、娘が自分の意思でスケジュールを提案し、ママともパパと同じように過ごしたいと伝えたことが、和解につながった。
5. 共同養育の開始(娘・小学3年終わり)
和解内容に沿った生活が続く中、娘が「ママの家から帰りたくない」とストライキを3~4回起こす。
夫側の弁護士も「娘さんの意思を尊重しよう」と提案し、1週間交代の共同養育に合意。ほどなくして2週間交代に。
娘自身が「パパが寂しがるから帰る」と考えて、居場所を自分で選ぶように。iPadを使えるようにして、連絡はキッズ携帯で娘と元夫で直接取り合う形に。
6. 引越しと同居へ(中学2年〜現在)
中学2年生のとき、母が横浜へ引越しを決めたとき、娘が「ママと暮らしたい」と自ら元夫に伝え、了承を得て母子の二人暮らしがスタート。必要な手続きはまきさんと元夫で進めた。
中学3年以降も、月1回程度の娘と元夫の交流は続き、連絡は娘自身が行っている。
高校の進学先は自分で選択し、その後も更に引越し(千葉)を経て現在に至る。高校生になった今は、友達との関係を大事にするように。娘は元夫、義祖母、いとことはLINEで直接やり取りして関係を継続している。
まきさんに学ぶ 共同養育のための重要ポイント・成功の秘訣
1.子どもの意思を最優先に
- 選択する力を育てる
「話したいときに話していい」「どちらの親と過ごしたいか自分で決めていい」——そんなメッセージを繰り返し伝え、子どもが自分の意思を選択できることを尊重されていると感じられる関係性を築く。 - 主体性の尊重
父母と子どもでスケジュールアプリを共有することで、子ども自身が予定を把握し、主体的に行動を考えられるようになる。 - 年齢に応じた変化の受容
中学生になれば、生活環境を自分で選び始める。高校生になれば、友達との関係を優先するのは自然なこと。その変化を尊重し、必要なサポートに徹する姿勢が大切。
2.親自身の自立と成長
- 子育てを「自己実現」にしない
「子どもは自分とは別の人生を生きている」「元気で生きてくれればそれでいい」——そんなスタンスで、コントロール欲を手放し、良い意味で“手抜き”の子育てを実現。 - 親としての自己充実
一人の大人として自立し、自分の人生を豊かにすることが、子どもにとっても大切な姿勢。自分の楽しみや人生の目標を持つことが、安定した共同養育の土台になる。
3.元配偶者との関係性
- 関係の再定義
婚姻中のような甘えを引きずったコミュニケーションはトラブルの元。必要最小限のビジネスライクな関係に切り替え、連絡はメールのみ。挨拶や感情的な表現は避け、ドライで事務的に、要点だけ伝える。 - 未来志向の提案を
相手の不足や過去を責めるのではなく、「子どもにとって良い環境をつくるには?」という視点で、具体的な協力体制やリスクへの対応策を提示する。 - 子ども経由の連絡を整備
年齢が上がると、親同士の直接連絡ではなく、子どもが自分で連絡を取るようになる。そのために、キッズ携帯やiPadを活用し、無理なく使える環境を整える。
4.実務的な工夫
- 近距離居住の重要性
子どもが小さいうちは、両親が近所に住むことで、行き来しやすくなる。学校近くに住み、学校帰りに顔合わせができる環境で、つながりづくりをする。 - 持ち物の分担管理
ランドセルなど学校のものは子ども自身が、それ以外はスーツケースに入れて玄関前に取りに行く。衣類などは両方の家に置くなどの生活の工夫を。 - 学校との連携
共同養育の状況を学校に説明し、連絡体制を整える。行事の連絡なども両親に届くように配慮してもらう。 - 柔軟な費用負担
養育費にこだわらずに、実費負担をするなど、必要な時に柔軟に分担する形をとることで、対立を防ぐ。
5.制度的な支えの活用
- 法的手続きの活用
調停・裁判も視野に入れつつ、粘り強く交渉する。感情的にならず、子どもの利益を最優先に。 - 調査官調査の活用
子どもの意思を第三者が客観的に観察・記録することで、より良い合意につながる可能性がある。 - 学校行事の参加権の確保
父母どちらにも学校行事への参加権があることを明文化し、合意書等に明記する。
6.心理的・社会的サポートの活用
- 当事者コミュニティとのつながり
同じ経験を持ち、前向きな仲間と関係を構築。 - コーチングスキルの活用
子どもが自分で考え、選び取る力を育てるためのコミュニケーション力が親にも必要。コーチングの視点を取り入れることで、対話が変わる。
7.経済・親権に関する現実的対応
- 柔軟な費用負担
養育費にこだわらずに、実費負担をするなど、必要な時に柔軟に分担する形をとる。入学金や制服代など、必要に応じて「お願いします」で対応可能。 - 親権の有無にこだわらない
親権がなくても、同居していれば住民票を基に公的支援(手当など)を受けることは可能。
8.共同養育のメリット
- 仕事・趣味の両立
自分のペースで仕事に集中したり、趣味や人付き合いを楽しんだりする余裕が生まれる。 - ワンオペからの解放
交代での育児により、親自身の休息や自分時間が確保できる。 - 子どもをコントロールせず、自然に関われる
疲弊しないことで、子どもを気持ちよく受け入れやすくなる。
まとめ
今回、まきさんには、共同養育コーチとして、すでに背中を押されて頑張っているお父さん方も参加され、「今まさに聞きたい!」という熱気で大いに盛り上がった時間となりました。
まきさんは、離婚前から娘さんの健やかな成長を真剣に考え、娘さんが自分自身で選択できる存在になることを願い、常にその意思を尊重してこられました。同時に、自分自身の人生も大切にし、充実して生きる道を選び続けてこられた姿がとても印象的でした。
まきさんは、誰もが持つアサーション権*を、ご自身にも、そして娘さんにも大切にされており、あらゆる場面でそれを実践し、体現されてきたことが伝わってきました。特に、親がコントロールしない子育てを実践されている姿からは、自分を受け入れ、他者も尊重できる大きな器と、未来志向で物事を見るまきさんの在り方が伝わってきました。子どもの主体性を育みながら、両親それぞれと健やかで良好な関係を築いていけるように育ててこられたまきさん。その姿勢は、まさに日本における共同養育の最前線を歩むコーチとして、多くの人にとっての希望であり、目標となる存在です。
共同養育Lab.は、今後も毎月第1日曜日の午後に月島近辺にて開催予定です。共同養育に関心のある方は、ぜひお気軽にご参加ください。
*アサーション権:自分の意思や要求を表明する権利
基本的人権のひとつで誰にも生まれながらにして平等に与えられている

